EC事業の普及により配送ドライバーの需要が高まる昨今。企業に直接雇用されて正社員やアルバイトとして従事する方の他に、業務委託として個人で活躍するドライバーも増えてきています。

今回のコラムでは、運送業界で個人事業主として働くメリットやデメリットを紹介するとともに、業務委託ドライバーとして開業する方法を詳しく解説します。委託ドライバーとして活躍したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

【業務委託ドライバー】個人事業主のメリット

業務委託ドライバーが個人事業主として活躍するメリットとして、以下の4点が挙げられます。

  • 開業するハードルが低い
  • 働いた分だけ稼げる
  • 自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる
  • 人間関係に悩むことが少なくなる

開業するハードルが低い

業務委託ドライバーの大きなメリットとして、普通自動車免許があれば経験を問わず誰でも活躍できる点が挙げられます。軽貨物車両が1台あればすぐにでも仕事を始められるため、金銭的なハードルも低いです。

  • 自身で購入する
  • リース契約を結ぶ
  • 委託元の運送会社からレンタルする・支給してもらう

上記のような方法で配送用の軽貨物車両を用意することになりますが、新車を購入する場合に発生する初期費用は150~200万円程度。運送会社から配送車をレンタルしてフルタイムで稼働する場合は、毎月数千~数万円ほどのレンタル料が発生します。

運送会社によっては配送車を無料で支給しているところもあり、そういった委託元と契約を結べばさらに費用を抑えることが可能です。

自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる

所定労働時間が定められている正社員とは異なり、業務委託ドライバーは稼働スケジュールを自由に決められます。フルタイムで稼働してがっつり稼いだり、本業の傍ら隙間時間に稼働したり、自身のライフスタイルに応じて働き方を選択することができます。

とはいえ、請ける仕事の量を自由に決められるからといって、稼働し過ぎてしまわないよう意識する必要があります。個人の裁量が大きい一方で、稼働し過ぎて体調を崩してしまっても自己責任であり、労災保険も適用されません。

引っ越しシーズンや年末年始といった運送業界の繁忙期は特に、案件の量が増え、課されるノルマも厳しいものとなります。収入をアップさせるために働き過ぎて体調を崩し、長期間働けなくなってしまっては本末転倒です。

自身の体調と相談しながら案件量を調整するようにしてください。

働いた分だけ稼げる

業務委託ドライバーと契約を結ぶ運送会社の多くは、配送した荷物の個数に応じて報酬を支払う成果報酬制を採用しています。そのため、稼働時間を伸ばせば伸ばすほど収入アップを目指すことができます。

加えて、配送ドライバーとしての経験を積んでいけば、業務の流れを把握したり配送スピードを上げるために工夫したりできるようになるでしょう。同じ時間に配送できる荷物の個数が増えていけば、より効率よく稼ぐことが可能となります。

人間関係に悩むことが少なくなる

正社員やアルバイトの配送ドライバーとは異なり、個人で仕事を請ける業務委託ドライバーは人間関係に悩む機会が少ない傾向にあります。

委託元や配送先にいるお客様との最低限のコミュニケーションは求められるものの、上司と部下のような関係性もなく必要以上に気を遣うこともないでしょう。

コミュニケーションがあまり得意ではない、あるいは1人で黙々と業務をこなすことがあまり苦にならない方は、業務委託ドライバーに適していると言えるでしょう。

【業務委託ドライバー】個人事業主のデメリット

上記のようなメリットがある業務委託ドライバーですが、以下のようなデメリットがあることに留意しておくべきです。

  • 経費を自分で負担しなければならない
  • 確定申告のような手続きが面倒である
  • 労災や福利厚生がない
  • 報酬の受け取りが遅れることもある

経費を自分で負担しなければならない

個人事業主である業務委託ドライバーは、以下のような経費を自身で負担しなければなりません。

  • 配送車のガソリン代・オイル交換代
  • 駐車場代
  • 自賠責保険や任意保険の加入料
  • 携帯代

フルタイムで稼働するドライバ―の場合、毎月5万円近くの費用負担が発生すると言われています。こうした経費が大きな負担となり、頑張っているのに思ったより稼げないと感じる業務委託ドライバーも少なくないようです。

確定申告のような手続きが面倒である

個人事業主として働く以上、確定申告や住民税の納付なども自身で行わなければなりません。特に確定申告では、日々稼働する中で発生する収支を細かく記録したり、必要書類を記入して提出したりと決して少なくない手間が発生します。

過去に自身で手続きを行ったことがない場合は特に、こうした一連の手続きを大きな負担に感じてしまう方もいるでしょう。

ただし、経費を正しく計上して確定申告をすると、課税対象となる金額が減り、節税対策になります。結果的に収入をアップさせられるため、確実に実施しておくべきです。

労災や福利厚生がない

業務委託ドライバーは運送会社と雇用契約を結んでいるわけではないため、正社員とは異なり労災保険や福利厚生を受けることができません

比較的軽い荷物を運ぶ業務委託ドライバーは楽なイメージを持たれがち。しかし、荷物の積み込みや積み下ろしを繰り返したり、荷物を持ちながらエレベーターのない共用住宅の階段を昇り降りしたりと、実際は体力的にかなりハードです。

稼働し過ぎて体調を崩してしまったり、稼働中のケガで長期に渡って働けなくなったりすると収入が途絶え、場合によっては生活が圧迫されてしまうでしょう。

突然稼働できなくなる場合に備えて貯金を確保しておく、正社員やアルバイトと同じように補償を受けられる一人親方労災保険に加入するといった工夫が必要となります。

報酬の受け取りが遅れることもある

正社員やアルバイトの場合、月末や5のつく日、10のつく日などと毎月決まったタイミングで報酬が支払われます。一方、業務委託ドライバ―が報酬を受け取れるタイミングは委託元の企業によって異なります

業務委託ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、ドライバ―に支払う報酬の管理がずさんなところも少なくありません。そのため、報酬の支払いが数ヶ月遅れる、未払いがなかなか解消されないといったケースも考えられる点に留意しておくべきです。

業務委託ドライバーとして開業する流れ

個人事業主となり業務委託ドライバーとして働き始める際の流れは以下の通りです。

  • 個人事業主の開業届を提出する
  • 青色申告承認申請書を提出する
  • 配送車と運転免許を用意する

個人事業主の開業届を提出する

個人事業主として活動する以上、税務署への個人事業の開業・廃業等届出書の提出は必須となります。開業してから1ヶ月以内に、最寄りの税務署に提出するようにしてください。

青色申告承認申請書を提出する

必須ではありませんが、今後確定申告を実施することを想定して、青色申告承認申請書を提出しておくことをおすすめします。

  • 業務委託ドライバーを本業としており年間所得が48万円以上
  • 業務委託ドライバーを副業としており副業の年間所得の合計が20万円以上

確定申告を自分で行わなければならないのは上記の条件を満たすドライバーです。業務委託ドライバーとしてがっつり稼ぎたいと考えている方であればほぼ確実に該当するでしょう。

なお、青色申告承認申請書は原則として、青色申告を実施する年の3月15日までの提出が必要です。

配送車と運転免許を用意する

必要書類の提出が完了したら、普通自動車免許と業務に使用する配送車を用意すれば準備完了です。

なお、運送会社から支給される配送車を使用しなければならないケースでは特に、AT限定の普通自動車免許では稼働できないことも多いです。契約する運送会社を選ぶ際には求人情報をしっかり確認したり、担当者に事前に質問したりすることをおすすめします。

自身で配送車を用意する場合には、配送車を業務用として使用するため4ナンバー登録が必須となります。

  • 全長が4.7m以下である
  • 全幅が1.7m以下である
  • 全高が2.0m以下である
  • 総排気量が2,000cc以下である

4ナンバー車として登録できるのは上記の要件をすべて満たした車両のみです。また、自動車検査票、点検整備記録簿、自動車損害賠償責任保険(共済)証明書といった多くの書類が必要となります。

こうした情報は各地方の運輸支局のホームページにまとめられていますので、ぜひ一度チェックしてみてください。

個人事業主として運送業界で活躍しよう

経費の支払いや確定申告のような手続きが必要にはなりますが、高い自由度の中で従事できることは、個人で案件を請ける業務委託ドライバ―の大きな魅力です。本業としてがっつり稼ぐだけでなく、他の仕事や家事の傍ら副業として従事することもできます。

業務に慣れて配送スピードを上げられれば、大幅な収入アップを目指すことも十分可能です。経験に関わらず活躍のチャンスがある業務委託ドライバー。運転が好きな方や1人で黙々と作業することが得意な方は、ぜひ始めてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

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