個人事業主として配送業務にあたる業務委託ドライバー。ライフスタイルに合わせて稼働スケジュールを決められるといったメリットがある一方で、正社員やアルバイトとは異なり自身で保険に加入しなければならない点には留意が必要です。
今回のコラムでは、業務委託ドライバーが入っておくべき保険について詳しく解説していきます。ドライバーとして従事する上で必須となる任意保険の選び方についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
業務委託ドライバーが必ず入るべき保険
業務委託ドライバーが必須で加入しなければならない保険は以下の3つです。
- 国民年金
- 国民健康保険
- 自賠責保険
国民年金
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方が漏れなく加入する国民年金。企業に雇用されている方の場合直接納めることはありませんが、個人事業主である業務委託ドライバーは自身で支払わなければなりません。
国民健康保険
国民健康保険は、都道府県及び市町村が保険者となって運営する公的な医療保険制度です。対象となるのは他の公的医療保険制度に加入していない方。正社員のドライバーは社会保険に加入するため対象外となりますが、業務委託ドライバーは加入が義務付けられることになります。
自賠責保険
自動車事故の被害者救済を目的とした自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、配送ドライバーとして従事する方はもちろん、車を所有するすべての方に加入が義務付けられた保険です。
事故を起こしてしまった場合に一定の保険金が支払われますが、対象となるのは人身事故のみ。物に損害を与えてしまった場合やドライバー自身が負傷した場合は補償を受けることができません。
そのため、自賠責保険ではカバーしきれないケースでも補償を受けられるように、任意保険に加入するドライバーが多いです。
業務委託ドライバーが入れない保険
企業と雇用契約を結ばない業務委託ドライバーは、以下の保険には加入することができません。
- 厚生年金保険
- 労災保険
- 雇用保険
厚生年金保険
対象となる事業所に勤務している70歳未満の方が加入する厚生年金保険。保険料は勤務先と従業員本人が半分ずつ負担します。
将来の年金受給額が増えるためメリットの大きい保険ではあるものの、事業所に常時雇用されている方しか加入できないため、業務委託ドライバーは対象外となります。
労災保険
勤務中や通勤中のケガや病気に備える労災保険。日々配送車を運転するドライバーにとっては是非とも入っておきたいものですが、その対象者は正社員や契約社員、アルバイト、パートのみであり、業務委託ドライバーは加入することができません。
ただし、一定の条件を満たしていれば、特別加入制度に基づいて一人親方労災保険と呼ばれる労災保険と同様の役割を担う保険に入ることができます。
業務委託ドライバーは交通事故のリスクと隣り合わせであり、ケガや病気で働けなくなるとその分の収入がゼロになってしまうケースが一般的。そのため、いざという時に備えて特別加入制度を利用して労災保険に入っている方も多いです。
雇用保険
雇用保険は失業や休業で働くことができなくなった労働者の安定した生活を支援することを目的としています。
業務委託ドライバーは委託元の運送会社と雇用関係にないため原則雇用保険に加入できず、契約を解除された際に求職者給付や介護休業給付、育児休業給付などを受け取ることもできません。
業務委託ドライバーはご紹介した3つの保険に加入できない分、病気やケガをしたり、親の介護で稼働できなくなったりした際に十分な補償を受けることは難しいです。そのため、別の保険に加入することで補填する方が多くいます。
業務委託ドライバーとして従事する上で加入しておくと安心な保険について、この後詳しく紹介します。
業務委託ドライバーが入っておくと良い保険
業務委託ドライバーが入っておくべき保険として、以下の4つが挙げられます。
- 任意保険
- 貨物保険
- 就業不能保障保険
- 所得補償保険
任意保険
任意保険はその名の通り強制ではありませんが、加入しておくことをおすすめします。というのも、万が一の事態に備えておくことで安心して業務に臨めるためです。
加えて、業務委託ドライバーと契約を結ぶ運送会社の中には、任意保険に加入することを契約の条件として取り入れているところも多いです。
補償の対象が人身事故に限られている自賠責保険に対して、任意保険は主に以下のような種類があり幅広いケースに対応しています。
- 車両保険:車両が事故や災害で壊れたり盗まれたりするケースを補償
- 自損事故保険:単独事故や過失割合が100%の事故を補償
- 対物賠償保険:自動車事故により他人の物を壊してしまうケースを補償
- 無保険車傷害保険:事故の相手が無保険・あるいは保険金額が十分でないケースを補償
交通事故のリスクを負いながら仕事をする業務委託ドライバーにとって、任意保険の加入はほぼ必須だと言えるでしょう。
貨物保険
配送中に荷物が破損してしまった場合に発生する、荷物の所有者への賠償を補償してくれる貨物保険。お客様の荷物を預かり、責任を持って配送する業務委託ドライバーにとって重要度の高い保険だと言えます。
どれだけ注意して配送業務にあたっていても、業務委託ドライバーには以下のようなリスクがつきものです。
- 運転中の大きな振動で荷物を傷つけてしまった
- 荷物を積み込む際に誤って落としてしまった
- 配送車を離れている隙に荷物を盗まれてしまった
貨物保険は走行中だけでなく、積み込みや荷物の受け渡しといった業務の最中に発生した損害も対象となるため、こうしたトラブルに広く対応することができます。
配送する荷物の中には10万円を超える高額なものもあるでしょう。多額の損害賠償を自ら負担しなければならないような事態を防ぐためにも、加入しておく方が安心です。
就業不能保障保険・所得補償保険
就業不能保障保険や所得補償保険は、病気やケガで長い間稼働できなくなってしまった際に毎月給付金を受け取れる保険です。
大きな違いとしては、生命保険会社が取り扱う就業不能保険の方が、損害保険会社が取り扱う所得補償保険よりも補償対象となる期間が長い点が挙げられます。
労災保険や雇用保険に加入できない業務委託ドライバーにとって、2つの保険は正社員にしか受けられない補償を補う役割を担ってくれます。業務委託ドライバーを本業としている方は特に、ぜひチェックしておきたいものです。
【業務委託ドライバー】任意保険を選ぶポイント
先程ご紹介した保険の中でも、任意保険は業務委託ドライバーにとってほぼ必須とも言える保険です。任意保険のサービスや補償の内容は保険会社によって大きく異なります。
安心してドライバー業務に臨めるよう、以下のようなポイントを意識して任意保険を選ぶことが求められます。
- 補償内容は充実しているか
- 十分な補償金額を受け取れるか
- 保険料は予算の範囲内か
- ロードサービス・特約はあるか
ドライバーの免許証の色や等級によって異なる保険料や、保険会社によって大きく変わってくる補償金額に関しては、契約する前に保険会社に相談して念入りに確認するべきです。
毎月支払う保険料に見合った補償やサービスを受けられることを確かめた上で契約を結ぶようにしてください。
不測の事態に備えて保険に加入しよう
業務委託ドライバーの仕事をメインの収入源としている方は特に、月々支払う保険料を抑えたいと考えてしまいがちです。
もちろん毎月の保険料で生活が圧迫されることは避けなければなりません。しかし、不測の事故により多額の賠償責任が発生したり、長期間稼働できなくなったりして生活に困ってしまうケースも十分考えられます。
安心して稼働するため、加入が義務付けられていない保険についても前向きに検討することをおすすめします。
この記事の執筆者
軽カモツネット編集部
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