軽貨物運送業を営む上で欠かせない黒ナンバー車。個人事業主として活動する軽貨物ドライバーの中には「黒ナンバー登録した配送車を普段使いできれば、所有する車が1台で済んでコストを抑えられるのに」と考える方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、黒ナンバー車は普段使いすることが可能です。しかし、プライベートで使用する際には乗車人数やメンテナンスに関していくつか注意点があります。

今回のコラムでは、黒ナンバー車を普段使いする際のメリットや気をつけるべきポイントを詳しく解説していきます。

黒ナンバー車は普段使いできる

黒ナンバーは、お客様が指定した場所へ、有償で荷物を運ぶ軽貨物運送業を営むことを目的として取得するものです。

ただ、黒ナンバー登録した業務用の車とは別に普段使い用の車を所持すると、税金や保険料、整備費用などが倍かかってしまいます。軽貨物ドライバーとして稼働しながら車を2台維持することは、決して簡単ではありません。

黒ナンバー車は配送業務だけでなく、プライベートでも使用することができます。そのため、個人で活動する軽貨物ドライバーの中には、配送業務で使用する黒ナンバー車を普段使いしている方も多いです。

黒ナンバー車と自家用車の違い

ここからは、黒ナンバー車の普段使いを検討する上で知っておきたい、黒ナンバー車と自家用車の違いを解説していきます。

定員

軽自動車には最大4名乗車することができます。しかし、軽貨物ドライバーが荷物を配送する際に使われるワンボックス型の軽自動車(いわゆる軽バン)は、後部座席を畳んで最大2名を乗車定員として利用することが一般的です。

プライベートで快適に利用したいと考えるのであれば、後部座席が大きな車種を選ぶのが良いでしょう。

ただ、仕事とプライベートとで用途を切り替える度に軽バンの定員を変更しようと思うとかなりの手間がかかります。業務の際に荷物をたくさん積み込みたい場合、後部座席が大きいとかえって邪魔に感じられることもあるでしょう。

そのため、「快適に普段使いできるかどうか」を重視して軽貨物車を選ぶのはあまりおすすめできません

維持費

自家用車と黒ナンバー車の維持費の違いを以下にまとめています。

税金

自家用車と黒ナンバー車を所持する上で支払わなければならない税金は、それぞれ以下の通り。黒ナンバー車にかかる税金の方が、自家用車に比べて若干安くなっています。

  自家用車 黒ナンバー車
自動車税 5,000円 3,800円
自動車重量税 6,600円 5,200円
自賠責保険料 17,540円 17,540円
印紙代 1,400円前後 1,400円前後

※2024年10月時点での情報です。

保険料

軽貨物運送業で使用される黒ナンバー車は、自家用車に比べて走行距離が長く、どうしても事故のリスクが高くなりがちです。そのため、黒ナンバー車の任意保険料は自家用車よりも高く設定される傾向にあります

自賠責保険とは異なり、任意保険への加入は必須ではありません。しかし、軽貨物ドライバーは常に事故のリスクと隣り合わせであることから、万が一の事態に備えて加入しておくべきでしょう。

軽貨物車の法定費用に関しては、以下の記事でさらに詳しくまとめています。興味のある方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。

黒ナンバー車を普段使いするメリット

黒ナンバー車を普段使いするメリットは以下の通りです。

  • 所有する車の台数を減らせる
  • 税金・固定費が安く済む

黒ナンバー車を仕事とプライベートの両方で使用することができれば、車検やメンテナンスにかかる費用や駐車場代が1台分で済みます

黒ナンバー車の任意保険料は先述した通り自家用車に比べて高額ですが、黒ナンバー車を普段使いすればプライベートで任意保険に加入する必要はありません。任意保険の高さもそこまで気にならなくなるはずです。

黒ナンバー車を普段使いする際の注意点

黒ナンバー車を実際に普段使いする際には、以下の3点に注意する必要があります。

  • リース契約の場合は普段使いできないこともある
  • 最大積載量・乗車定員は必ず守る
  • 部品の交換をこまめに実施する

リース契約の場合は普段使いできないこともある

軽貨物車両の取得費用を抑えるため、カーリースを利用する方もいるでしょう。リース契約の場合は、黒ナンバー車を普段使いできないこともある旨を必ず頭に入れておいてください。

リース契約した黒ナンバー車の普段使いの可否は、契約内容によって変わってきます。プライベートでの利用を想定している軽貨物ドライバーの方は、事前に契約書を確認しておくことをおすすめします。

最大積載量・乗車定員は必ず守る

黒ナンバー車の最大積載量や乗車定員は、車両の条件によって以下のように変わってきます。

<4ナンバー車>

乗車定員 最大積載量
2人 350kg
4人 250kg

<5ナンバー車>

乗車定員 最大積載量
1人 165kg
2人 110kg
3人 55kg

5ナンバー車の後部座席を取り払って黒ナンバー車を取得した場合は、4名での乗車ができない点にも留意しておきましょう。

乗車定員より多くの人を乗せてしまうと、業務中であってもプライベートであっても道路交通法違反とみなされ、罰金や減点をもらうことになります。家族や友人などを複数人乗せて運転する機会が多い方は、プライベートではカーシェアリングを利用するというのも選択肢の1つです。

点検や部品・消耗品の交換をこまめに実施する

業務とプライベートの両方で黒ナンバー車を使用していると、部品の消耗は当然早くなります。エンジンオイルやタイヤ、バッテリーといった消耗品を頻繁に交換しなければなりません。

業務中に車両に不備が見つかったり故障したりしてしまうと、時間指定の荷物の配送に間に合わない可能性も考えられます。業務前の車両点検を欠かさないのはもちろん、こまめなメンテナンスも意識的に実施できると良いです。

黒ナンバー車は黄色ナンバーに戻せる

黒ナンバー車を業務とプライベートの両方で使用しているドライバ―が軽貨物運送業を辞める場合、黒ナンバー登録していた車両は黄色ナンバーに戻すことをおすすめします。任意保険料が大きく下がり、法定費用を大幅に削減できるケースが多いためです。

黒ナンバー車を黄色ナンバーに戻す際の大まかな流れは以下の通り。自家用車を黒ナンバー登録する手続きと似ており、ほとんどの場合、1日で済ませることができます。

  1. 運輸支局に必要書類を提出する
  2. 事業用自動車等連絡書の交付を受ける
  3. 車検証・運輸支局で交付される書類を持参し、軽自動車検査協会で手続きを行う
  4. 黄色ナンバーの交付を受ける

必要書類や細かな手順は運輸支局によって異なる場合があるため、不安な方は営業所を管轄する運輸支局で確認してみてください。

ルールを守って普段使いしよう

個人で事業を営む軽貨物ドライバーの方は、黒ナンバー車をプライベートでも使用することで税金や保険料といった法定費用、ガソリン代や駐車場代などの固定費を削減できます。

黒ナンバー車の普段使いはお得な一方で、契約内容や乗車定員を守らなければ罰せられたり、契約トラブルに巻き込まれたりする可能性も考えられます。本記事でお伝えした内容を踏まえ、必ずルールを守って使用するようにしてください。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

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