宅配ドライバーが日々業務にあたる中で直面する問題の1つとして、駐車違反(駐禁)が挙げられます。担当するエリアによっては配送車を停められるスペースをなかなか見つけられず、業務が滞ってしまうこともあるでしょう。
業務を効率良く進めるために駐禁をする、なんてことは当然あってはなりません。加えて、駐禁で取り締まられると業務に支障が出るリスクがあるというのも、ドライバーが駐禁を避けなければならない理由の1つです。
今回のコラムでは駐禁について詳しく紹介するとともに、配達中のドライバーが駐禁をとられないようにすべきことを解説していきます。
目次
駐禁にあたる条件とは
本来、駐車を禁止されている場所に車両を停めてしまうと、道路交通法によって駐禁とみなされ、厳しい罰則が課せられてしまいます。駐禁は以下の2種類に分けられます。
- 駐停車違反
- 放置駐車違反
駐停車違反
駐停車違反とは、運転者が車内にいるかどうかに関係なく、駐停車が禁止されている場所で駐車や停車をすることです。駐車は車両が継続的に停止し、運転者が車両から離れていてすぐに運転できない状態を、停車はすぐに出発できる状態での停止を指します。
- 駐車禁止場所に駐車した状態
- 停車禁止場所で停車した状態
- 時間制限のある駐車可能場所で、制限時間を超えて駐車した状態
具体的には上記のような状態が該当し、運転者が車内にいても違反とみなされます。
放置停車違反
放置停車違反とは、運転者が駐停車違反をしたまま車から離れ、警察官や駐車監視員から直接注意を受けられない状態のことを指します。駐停車違反との大きな違いは「運転者が車内あるいは車両のすぐ近くにいて即座に運転できる状態かどうか」ということです。
配達中も駐禁になる
駐禁は配達中のドライバーにも例外なく適用されます。
道路交通法では、荷物の積み下ろしを目的とした5分以内の駐車は駐禁の対象外だとされています。しかし、荷物を配達している最中や、故障により車両が動かなくなってしまったという場合は駐禁に該当するため、注意が必要です。
上記以外に駐禁の対象外となるケースとして、駐車禁止除外指定車標章(駐車禁止区域での一時的な駐車を認める標章)が交付されている場合が挙げられます。
ただし、駐車禁止除外指定車標章が適用されるのは、福祉車両や緊急車両(パトカー、レッカー車など)といった公共性が高い車両のみ。運送業で使用する配送車は対象外であることに留意しておきましょう。
駐禁になるとどうなる?
駐禁で取り締まりを受けた際に処分の対象となるのは、原則としてその車両を運転し、違反した本人です。駐禁に対して科される違反点数や反則金は、道路交通法により以下のように定められています。
駐停車違反 | 放置駐車違反 | ||||
---|---|---|---|---|---|
駐禁をした場所 | 駐車禁止場所等 | 駐停車禁止場所等 | 駐車禁止場所等 | 駐停車禁止場所等 | |
違反点数 | 1 | 2 | 2 | 3 | |
反則金 |
大型車 | 12,000円 | 15,000円 | 21,000円 | 25,000円 |
普通車 | 10,000円 | 12,000円 | 15,000円 | 18,000円 | |
二輪車 | 6,000円 | 7,000円 | 9,000円 | 10,000円 | |
原付 | 6,000円 | 7,000円 | 9,000円 | 10,000円 |
※2024年12月時点
運転者がその場におらずすぐに車両を移動できない放置駐車違反に対しては、より重い罰則が科されます。
駐禁をした場所によって反則金が変わる点も、頭に入れておきましょう。駐車のみが禁止されている駐車禁止場所に比べ、駐車も停車も禁止されている駐停車禁止場所の方が反則金は高くなります。
駐車禁止場所や駐停車禁止場所は、道路交通法によって以下のように定められています。
<駐車禁止場所>
- 駐車場、車庫などの自動車用の出入口から3メートル以内の場所
- 道路工事の区域の端から5メートル以内の場所
- 消防用機械器具の置場、消防用防火水そう、これらの道路に接する出入口から5メートル以内の場所
- 消火栓、指定消防水利の標識が設けられている位置や消防用防火水そうの取り入れ口から5メートル以内の場所
- 火災報知機から1メートル以内の場所
※引用:道路交通法 第45条
<駐停車禁止場所>
- 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内(線路)、坂の頂上付近、勾配が急な坂、トンネル内
- 交差点やその端、道路のカーブから前後5メートル以内の場所
- 横断歩道、自転車横断帯、またはその端から前後5メートル以内の場所
- 安全地帯の左端とその前後10メートル以内の場所
- バスや路面電車の停留場の標示板(表示柱)から10メートル以内の場所
- 踏切とその端から前後10メートル以内の場所
※引用:道路交通法 第44条
※引用:HELLO CYCLING
基本的に、駐車禁止や駐停車禁止の場所には上記のような標識や道路標示が設置されています。ただし、バス停の前、車庫や駐車場の入り口など、駐車や駐停車が禁止されていても標識が設置されていないケースがあるため要注意です。
駐車や駐停車ができるか迷った際には、一度警視庁のホームページで確認してみることをおすすめします。
配達中に駐禁をとられるデメリット
ドライバーが配達中に駐禁を取られてしまうデメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 反則金を取られる
- 違反点数が加算される
- 運転免許証のグレードが下がる
反則金を取られる
駐禁による処分の対象となるのは運転者自身であり、ドライバーが駐禁を取られた際の反則金を運送会社が負担してくれることは基本的にありません。
軽貨物ドライバーの場合、使用する配送車は普通車にあたり、駐禁1回につき10,000〜18,000円の反則金を自腹で支払う必要があります。
フルタイムで稼働する軽貨物ドライバーの1日あたりの手取りは10,000~15,000円と言われているため、1回の駐禁で1~2日の売上が失われてしまうことになります。業務を素早く進めたいがために駐禁をして取り締まられると、その日の頑張りが無駄になり本末転倒です。
違反点数が加算される
上述した通り、駐禁をすると運転免許証の点数が1~3点減点されてしまいます。駐禁による減点を繰り返して免許停止になってしまうと、ドライバーは業務をこなすことができず、廃業せざるを得ません。
運転免許証のグレードが下がる
配送車を運転するドライバーにとって必須とも言える自動車保険。自賠責保険の料金は車種に応じて定められていますが、任意保険では運転免許証のグレードによって割引が適用される場合があります。
駐禁を繰り返すと運転免許証のグレードが下がり、毎月支払う任意保険料が高くなってしまうことも。支出がかさみ、効率良く稼ぐことが難しくなってしまいます。
配達中の駐禁が「おかしい」と言われる理由
配達中の宅配ドライバーでも例外なく駐禁を取られるとお伝えしましたが、こうした現状に対して、SNSでは以下のような声が多数寄せられています。
- 配達先の近辺に駐車場がなく、仕方なく路上に数分駐車しただけで駐禁を取られて理不尽だ
- 明らかに作業中の宅配車両を見つけて駐禁を取るのはおかしいと思う
- 通行の妨げにならない場所に停車していた配送車が駐禁を取られていてかわいそうだった
宅配ドライバーは車を停めずに荷物を届けることはできません。それにもかかわらず、都市部を中心に配送車を停められるスペースは不足しています。中には配達エリアの周辺に全く駐車場がなく、駐禁をするしかないケースも。
真面目に働くドライバーが配達エリアから離れた駐車場を探す、反則金や免許停止のリスクを考慮するといった苦労を強いられる現状に対して、おかしいと感じる方が多いようです。
配達中の駐禁に関する法改正・規制緩和の予定は?
2024年12月現在、配送車の駐禁に関して具体的な法改正は実施されていません。しかし、先述したような現状を踏まえ、配達中の車両の駐車に対する規制緩和の取り組みが進んでいます。
具体的には、配送車専用の駐車スペースを設置する、配送車が駐車できる時間帯を設定するといった対策が検討されています。とはいえ、宅配需要が急速に増加する中、配達車両の駐車スペースは依然として不足しているのが現状です。
駐禁を取られないためにドライバーがすべきこと
ここからは、駐禁を取られず業務を進めていくためにドライバーができることをご紹介していきます。
- コインパーキングを利用する
- 許可を得て私有地に停車する
- 駐車可能な場所を警察官に尋ねる
駐禁のリスクがないコインパーキングを利用するのが最も確実な手段だと言えますが、私有地に駐車するのも有効です。私有地は駐禁の対象外であり、所有者に許可を取れば問題なく車を停めることができます。
担当する配達エリアが決まっているドライバーであれば、周辺にある私有地の所有者に、配送車を停めさせてもらえるよう交渉することを検討してみても良いかもしれません。
駐車できる場所がどうしても見つからない、停めても良いか迷うといった場合は、警察官に尋ねてみることをおすすめします。警察官は駐禁にあたらない駐車スペースを熟知していると考えられるためです。
駐禁にならないようルールを守って配達しよう
配達業に従事する以上、駐禁のリスクは避けては通れません。手早く配達を済ませるために駐禁をして反則金や違反点数を科されてしまうと、せっかく稼いだ売上が失われる、ドライバーを続けられなくなるといった事態に発展する可能性も考えられます。
ルールを守って配達することが、効率良く業務を進める最善の方法だと言えるでしょう。今回お伝えしたポイントを押さえ、駐禁を取られてしまうリスクを避けてみてください。
この記事の執筆者
軽カモツネット編集部
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