昨今配達ドライバーの間でできれば避けたい配達先として挙げられているのが、タワーマンション(以降、便宜上タワマンと表記します)です。

タワマンには特有の配達ルールやセキュリティを万全にするための手続きが設けられており、他の個人宅に荷物を届ける場合に比べて業務がかなり複雑化する傾向にあります。

中には1つの荷物を届けるだけで数十分かかってしまうこともあり、運送会社やドライバーがタワマンへの配達依頼を拒否するケースも増えているようです。

本記事では、ドライバーがタワマンへの配達を負担に感じ、拒否したくなってしまう要因を詳しく解説していきます。タワマン配達を少しでも効率化するためのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

タワマン配達を大変に感じるドライバーは多い

近年都市部でタワマンが急増する中、宅配ドライバーがタワマンへ荷物を届ける機会も増えています。1棟に多くの世帯が集中しているタワマンへの配達は一見効率的であるように思えますが、その実態は大きく異なります。

エレベーターの待ち時間が長い、台車を自由に使えないといった様々な制約により、タワマンへの配達は他の個人宅への配達よりもずっと時間がかかる場合がほとんど。中には、1棟のタワマンで全ての荷物を届けるのに数時間かかってしまうこともあるようです。

実際、「タワマン地獄にはまる配達員」などとしてタワマンへの配達に苦労するドライバーの様子を紹介するインターネット記事が複数投稿されています。さらに、SNS上では以下のような声が多く寄せられています。

  • 一軒家とタワマンで配達料金が同じなのはおかしい
  • 別料金として1万円はもらわないと採算が合わない
  • 本来20分で配達できるはずが倍の40分以上かかる
  • 建物ごとに配達料金が変わる制度があればいいのに

タワマンへの配達の大変さは、社会的に大きな注目を集めていると言えるでしょう。

タワマンで配達拒否したくなる理由6選

ドライバーがタワマンへの配達を拒否したいと感じてしまう具体的な要因として、主に以下の6つが挙げられます。

Point

・強固なセキュリティに伴う手続きに時間がかかる
・台車の使用を制限される
・エレベーターを自由に使えない
・置き配が禁止されている・宅配ボックスが埋まる
・駐車スペースの確保が難しい
・住民への対応が難しい

強固なセキュリティに伴う手続きに時間がかかる

セキュリティが強固なタワマンでは、配達とは直接関係のない手続きがかなり煩雑な傾向にあります

中には、以下のような手続きや作業をこなさなければならないケースも。入館する、配達先の階にたどり着くといった荷物を届ける以前の段階で時間をとられることに苦悩するドライバーは多いです。

  • 荷物を1つ届けるたびにセキュリティロックの解除を複数回実施する
  • 階ごとにセキュリティ解除カードを借りる
  • 配達するたびに1階に戻ってインターホンを鳴らす

タワマンのセキュリティ対策は居住者や建物の安全を守るという重要な役割を担っていますが、配達ドライバーにとっては悩みの種となってしまっているのが現状です。

台車の使用を制限される

  • 床が傷ついてしまう
  • 壁などに衝突して破損する可能性がある
  • 台車の音がうるさいと住民から苦情が寄せられる

タワマンによっては、上記のような理由で台車の使用が制限されているところも。具体的には、エレベーターホールまでは使用できるが廊下では使えない、静音仕様の台車であれば使用できるといったケースがあるようです。

重量のある荷物を楽に運んだり、複数個の荷物を1度に運んだりできる台車は、配達ドライバーの必需品の1つ。台車を使用できないとなると、荷物を運ぶ際の移動距離や体力的な負担が大きくなり、配送効率はどうしても下がってしまいます

エレベーターを自由に使えない

タワマンは階数が多い分、エレベーターの昇降にかかる時間は一般的なマンションに比べて長いです。ただ、配達員にとっての悩みの種は他にも存在します。

多くのタワマンにおいて、配達ドライバーは住民用とは別の業者用エレベーターを利用しなければなりません。タワマンの業者用エレベーターは、他のドライバーや清掃業者なども利用するため混雑しがちです。加えて、以下のような対応を余儀なくされるケースもあります。

  • ペット用・業者用を兼ねたエレベーターではペットを連れた住民に順番を譲り続ける
  • 階ごとに止まるエレベーターが異なり都度乗り換える

引用元:タワマン地獄にはまる配達員 1棟で4時間超えも「別料金もらいたい」

上に掲載した画像の調査では、タワマンへの配達にかかる時間のうち、エレベーター待ちや建物内の移動は約3分の1を占めるとされています。エレベーターの制約によって発生するタイムロスは、配達ドライバーにとってかなり大きな負担になっていると言えるでしょう。

置き配が禁止されている・宅配ボックスが埋まる

タワマンの中には、セキュリティ面への配慮や景観を損ねるといった理由から、置き配が禁止されているところも多いです。戸数に対して宅配ボックスが足りない、私物を入れる住民がいるといった場合は宅配ボックスもすぐに埋まってしまい、再配達を余儀なくされます。

ただでさえ配達業務が煩雑であるにも関わらず、再配達しなければならないとなると二度手間となり、ドライバーの負担はさらに大きくなってしまいます。

駐車スぺースの確保が難しい

タワマンに入る前段階である駐車から手こずってしまうケースも考えられます。

  • 配送業者用の駐車場がない
  • 業者用の駐車スペースが数台分しかなく他の事業者や勝手に使う住民と取り合いになる
  • 駐車スペースの利用に30分などと時間制限が設けられている

上記のような場合、やむを得ず路上駐車をして配達を行い駐禁を取られてしまう、なんていう事態も珍しくありません。

住民への対応が難しい

住民への対応に苦戦する配達ドライバーも多いです。

まず挙げられるのが、品位を損なうとして服装について厳しく指摘されるケース。スーツの着用を求められたり、雨の日にカッパを着ていただけで文句を言われたりすることもあるようです。

加えて、タワマンのルールを十分に理解していない住民から理不尽な指示やクレームが寄せられる事例も散見されます。具体的に挙げられるのは、置き配が禁止されているにも関わらず荷物をドアの前に置いておくように指示される、といったケースです。

タワマン配達でのドライバーの負担を軽減する動き

ご紹介したような問題が注目を集めている中、タワマンへの配達で発生するドライバーの負担を軽減するため、少しずつではありますが以下のような取り組みが進められています。

  • 管理人が荷物を一括で受け取る
  • 業者用の駐車スペースの設置を義務化する
  • ロボット配達を導入する

再配達や各部屋の行き来による負担を軽減するため、住民の荷物を管理人が一括で受け取る仕組みの試験的な導入が進められています。ドライバーの大幅な業務効率化が期待できますが、その一方で、管理人の負担が大きくなるという課題も指摘されています。

マンション内の移動を配送ロボットに担ってもらう実証実験も、今注目されている取り組みの1つです。管理人による一括受け取りと同様、ドライバーは住人の荷物をまとめて届けるだけで良くなり、スムーズに業務を進められるようになる可能性が高いでしょう。

タワマン配達を効率化するコツ

タワマンへの配達に時間がかかってしまう要因の多くは、ドライバーだけの力では改善が難しいです。そういった中で少しでも業務を効率化するための方法として、本来の配達業務の無駄を削減することが挙げられます。

不在票の記入や荷物の積み込みなど、配達場所に限らず発生する工程をできる限りスムーズに進められるよう工夫を重ねると良いです。具体的には、不在票に前もって自分の名前や連絡先を記載しておく、先に配送する荷物は手前に積み込むといった対策が考えられます。

配達ドライバーが業務を効率化する方法については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひこちらも合わせてチェックしてみてください。

業務効率化でタワマン配達の時間を短縮しよう

宅配サービスが以前に比べて身近になりつつある中、タワマン配達におけるドライバーの負担は荷物を受け取る住人と密接に関わる問題だと言えます。住民の暮らしやすさだけを優先していると、ドライバーによる配達拒否といった事態も起こり得るでしょう。

今回ご紹介した管理人による一括受け取りや駐車スペースの設置義務化といった取り組みに加え、タワマンの住民と配達ドライバーが互いに歩み寄ることが求められます。

配達ドライバーが今できることとしては、本来業務の効率化が挙げられます。エレベーターの待ち時間に別の配達先へ向かうルートを考えるというように、タワマンだからこそできる工夫もあるでしょう。

様々な制約の中でも自分なりに改善を重ね、スムーズに配達を進められる方法を探ってみてください。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

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