1日100km以上走行することも多い業務委託ドライバー。長時間の運転は体力も集中力も必要ですが、やはり心配なのは事故です。
単純に考えて、運転している時間が長ければ長いほど事故を起こしてしまうリスクは高くなり、他人の事故に巻き込まれてしまうこともあるでしょう。
そういった時のために、業務委託ドライバーになる前には必ず事故を起こした、あるいは巻き込まれた際の対処法を知っておく必要があります。万が一の事態にも戸惑わないよう、今回のコラムの内容をよく理解しておいてください。
目次
軽貨物ドライバーが事故に遭うのは珍しくない
国土交通省が2023年に実施した調査によると、個人事業主の軽貨物ドライバーの1日の業務時間の実態は以下の通り。
- 8時間以下:41%
- 9~10時間:18%
- 11~12時間:21%
- 13時間以上:21%
こちらの調査対象には副業で軽貨物ドライバーをしている方なども含まれているため、「8時間以下」の方の割合が最も小さくなるのは当然といえるでしょう。
ただ、それにも関わらず、9時間以上働いている方が合計で60%以上。
正社員とは違い、業務委託として働くドライバーには業務時間の上限などが適用されませんが、政府としては対策を取らざるをえない数値です。
業務中、常に運転しているわけではないとはいえ、これだけ長時間働いているということはそれだけ事故に遭うリスクも高く、実際軽貨物ドライバーの事故は決して珍しくありません。
業務委託ドライバーが事故を起こした場合の対処法
もし業務委託ドライバーが事故を起こした場合の対処法を解説しますが、まず自動車事故は物損事故と人身事故に分けられます。対処法が異なるので、それぞれに分けて解説していきます。
- 物損事故を起こした場合の対処法
- 人身事故を起こした場合の対処法
物損事故を起こした場合の対処法
まず、物損事故を起こしてしまった際の対処法は以下の通りです。
- けが人がいないか確認する
- 二次被害を起こさないように注意する
- 警察に連絡する
- 事業所に連絡する
- 保険会社に連絡する
一見、物損事故のようでも実は見えていなかったところで誰かがけがを負っていたということは十分あり得ます。例えば、何かにぶつかった際、飛散物が周囲の人に当たったということが考えられるでしょう。
もしけが人がいた場合はそちらの対処が最優先なので、まずは周囲をよく確認しましょう。
ひとまず安全が確認できたら、次は二次被害を起こさないように努めることが重要です。車を動かせるのであれば、安全な場所に移動、停止させて問題ありません。
その後、警察、事業所、保険会社と然るべき機関に連絡します。
人身事故を起こした場合の対処法
万が一人をはねてしまった場合、以下の順番で対処してください。
- まずは落ち着くことを意識する
- 救護活動をする
- 救急車を呼ぶ
- 警察を呼ぶ
- 事業所に連絡する
- 保険会社に連絡する
人の安全が第一ではありますが、ひとまず落ち着いて行動することを意識しましょう。安全な場所に移動し、必要に応じて救護活動を開始してください。同時に救急車も呼ぶ必要があるかもしれないので、周囲の人を頼るのも良いでしょう。
その後、配送に支障をきたす可能性もあるので、事業所にも連絡する必要がありますが、上記に比べると優先度は高くありません。救急車を呼ぶだけでなく、警察にも連絡し、指示に従ってください。
修理費用や損失は誰が負担する?
業務中に事故を起こして、車両の修理費用や荷物の賠償責任が発生した場合、基本的にそれらの損失はドライバー自身が被ることになります。正社員とは違い、事業所はあくまでドライバーに業務を依頼しているだけであるためです。
ただし、実際にどうなるかはケースバイケースといえるでしょう。ドライバーの負担がゼロになることはほぼありませんが、事故の原因によっては事業所も責任を問われる可能性があります。
- 事業所でレンタルした配送車に不具合があった
- 事業所が十分な管理責任を果たしていなかった
- 事業所が損害賠償能力がないドライバーに依頼していた
例えば上記のような場合、ドライバーだけでなく、事業所も事故による損失を負担しなくてはいけなくなる可能性があります。
軽貨物ドライバーが事故を起こす原因
軽貨物ドライバーが事故を起こす原因は様々ですが、よくあるパターンとしては以下のような例が挙げられます。一見当然のことのように思えるかもしれませんが、それぞれ相応の理由があるので、自分がその二の舞にならないようにぜひチェックしておいてください。
- 急いでいた
- 配送ルートを確認していた
- 集中力を欠いていた
急いでいた
事故を起こしてしまうよくある理由の1つは、やはり急いでいたということです。
特に業務委託ドライバーの場合は報酬形態が歩合制であることも多いですが、そうなると1日でどれだけの荷物を配送できるかによって報酬の額は変わります。そのため、自分はどれだけ気を付けているつもりでも、ついつい焦ってしまうという方が非常に多いです。
例えば、街中でものすごいスピードを出すタクシーを見かけたことがあるという方は多いでしょう。彼らも少しでも多くのお客様を運ぼうと必死になって運転していますが、軽貨物ドライバーも同じように急いで運転してしまう傾向があります。
配送ルートを確認していた
配送ルートを確認するために、スマートフォンやカーナビを見ていた、というのも事故の要因としては非常に多いです。
特に軽貨物ドライバーを始めたばかりの方は土地勘も不十分でよそ見しがちです。仮に住み慣れている街でも、配送業をしてみると意外に知らない道があるのがわかるでしょう。
また、住宅街は見通しも悪いため、一瞬のよそ見が大きな事故を引き起こすリスクがあります。
集中力を欠いていた
最後は集中力を欠いていたということです。
冒頭で解説した通り、業務委託ドライバーの中にはたくさん稼ごうと長時間働き続ける方が多いです。確かに自分が望むだけ働けるのは業務委託ならではの魅力ですが、事故を起こしてしまっては元も子もありません。
運転するのも荷物を運ぶのもじりじりと体力を奪っていくので、決して無理はせず、常にある程度の余裕を持って業務に努めましょう。
任意保険には必ず加入しておくべき
業務委託ドライバーは任意保険にも必ず加入しておきましょう。一般的な車と比較し、配送用の黒ナンバー車は保険料が高いですが、そのことを差し引いても絶対に加入しておくべきといえます。
というのも、自動車の所有者が必ず加入しなければいけない自賠責保険は相手方の対人の補償しか下りません。相手方の対物、また自分側の対人・対物は対象外であるため、一気に多額の損失を被るリスクがあるためです。
実際は補償の対象をどの程度まで広げるか選択することになりますが、少なくとも自賠責保険だけでは不十分だといわざるを得ません。
日常点検・定期点検を欠かさない
- 日常点検:毎日
- 法定点検:1年に1回
- 車検:2年に1回
軽貨物車は上記の頻度で各点検整備を行う必要があります。
このうち、日常点検や法定点検はもし行わなかったとしても罰則がないため、疎かにしている方も多いですが、全て義務です。安全に運転するために、点検は正しい頻度で必ず行わなければいけません。
事故の対処法を理解して安全運転を
毎日長時間運転する軽貨物ドライバーはどうしても事故に遭うリスクが高い職業なので、日頃から安全運転を心掛けましょう。効率的に仕事することは重要ですが、事故を起こして多額の損失が出てしまうと本末転倒です。
とはいえ、どれだけ気を付けていても事故に遭う可能性はゼロではありません。その時は然るべき対処法を迅速に行う必要があるので、今回の内容を参考に、万が一の事態に備えておいてください。
この記事の執筆者
軽カモツネット編集部
軽カモツネットは株式会社ギオンデリバリーサービスが運営する、軽貨物ドライバー向けの情報発信メディアです。運営元のギオンデリバリーサービスは2013年の設立以来、神奈川県相模原市を中心に業務委託ドライバーの開業支援や宅配サービスの運営など多岐にわたるサポートを行ってきました。拠点数は全国40カ所以上、約2,000名のドライバーが、日々安全で効率的な配送をご提供しています。軽カモツネットでは、軽貨物ドライバーの皆様のニーズに応え信頼される情報を発信してまいります。