長時間の運転を伴い常に事故のリスクと隣り合わせということもあり、軽貨物ドライバーが使用する黒ナンバー車の任意保険料は、自家用車に比べて高く設定される傾向にあります。

軽貨物ドライバーが任意保険料を抑える方法の1つとして、それまで加入していた任意保険の等級を引き継ぐことが挙げられます。事業を始めるにあたって新たに黒ナンバー車を確保する場合でも、一定の条件を満たしていれば等級の引き継ぎは可能です。

今回のコラムでは、自家用車から黒ナンバー車へ任意保険の等級を引き継ぐ際に満たさなければならない条件や手順について詳しく解説していきます。

軽貨物ドライバーは任意保険に加入するべき

軽貨物ドライバーとして稼働する上で、任意保険への加入は義務ではありません。しかし、軽貨物ドライバーは業務中の大半で配送車を運転するため、普段自家用車を利用する方に比べて走行距離が長く、その分事故のリスクも高いです。

加えて、軽貨物ドライバーと業務委託契約を結ぶ運送会社やマッチングサービスの多くは、任意保険への加入を必須条件として設けています。

以上の理由から、軽貨物ドライバーにとって任意保険への加入はほぼ必須と捉えて良いでしょう

そもそも任意保険の等級とは

等級の引き継ぎについて詳しく解説する前に、任意保険における等級の仕組みについて改めておさらいしておきましょう。

任意保険では、契約者の事故歴に応じて保険が適用されるリスクが1~20等級に区分されます。等級が高いほど保険が適用されるリスクが低いとみなされ、保険料の割引率が大きくなります。

初めて自動車保険を契約する場合は基本的に6等級が適用され、保険を使うような事故を1年間起こさなければ、次年度の等級が1つずつ上がっていくという仕組みです。

黒ナンバー車の任意保険料の相場は、6等級の場合で月額10,000〜15,000円、20等級の場合で7,000〜8,000円だとされています。保険会社によって異なりますが、年間に支払う任意保険料が6等級と20等級のドライバーで5万円以上変わってくるケースも考えられます。

保険料の支払いを抑えて手元に残る売上を増やしたい軽貨物ドライバーにとって、任意保険の等級の重要性は非常に高いと言えるでしょう。

自家用車の保険等級を黒ナンバー車に引き継げることもある

任意保険の等級は1年に1度しか上がりません。そのため、高い等級を獲得しようと思うと、何年もの間大きな事故を起こさないよう注意し続ける必要があります。

自家用車の任意保険で高い等級を持つ方が軽貨物運送業を始める場合、黒ナンバー車の任意保険に入り直すタイミングで等級がリセットされてしまうのは非常にもったいないです。

新しく黒ナンバーを取得する際、一定の条件を満たしていれば、自家用車の保険で設定されている等級を黒ナンバー車の任意保険にそのまま引き継ぐことができます。等級が高い方は特に、保険料を大幅に削減することが可能です。

任意保険の等級の引き継ぎは、軽貨物ドライバーにとってぜひとも知っておきたい仕組みだと言えます。等級を引き継ぐ条件や手順については、この後詳しく解説していきます。

黒ナンバー車の任意保険へ等級を引き継ぎする条件

自家用車から黒ナンバー車へ任意保険の等級を引き継ぐ際に満たさなければならない条件として、以下の2点が挙げられます。

  • 契約する配送車と契約者が同一である
  • 自家用保険と事業用保険の保険会社が同一である

黒ナンバー車向けの任意保険を取り扱っているのは一部の保険会社のみ。インターネットで申し込めるダイレクト型の自動車保険では、ほとんど取り扱われていません。

自家用車で加入している保険会社が、黒ナンバー車の任意保険に対応していない場合は要注意です。黒ナンバー車用の任意保険を取り扱っている保険会社で、自家用車の任意保険に一度入り直す必要があります。

なお、保険会社によっては、こうした条件を満たしている、いないに関わらず等級の引き継ぎができないケースもあります。 黒ナンバー車での加入を検討している任意保険会社に問い合わせて、引き継ぎの可否を事前に尋ねておくと良いでしょう。

任意保険の等級を引き継ぎする手順

自家用車の任意保険の等級を、黒ナンバー車へ引き継ぐ際の手順を以下にまとめています。前述の通り、保険会社を変更するかどうかによって手順が変わってきますので、自家用車での任意保険の加入状況に応じてチェックしてみてください。

※以降この見出しでは、もともと任意保険に加入している自家用車をA車、新たに用意する配送車をB車と表記します。

自家用保険と事業用保険の保険会社が同一の場合

自家用車で加入していた保険とこれから配送車で加入する事業用保険の保険会社が同一の場合は、以下のような手順で等級の引き継ぎを行います。

  1. B車を黄色ナンバーで納車する
  2. 現在加入している任意保険でA車からB車へ車両入れ替え手続きを行う
  3. B車で黒ナンバーを取得する
  4. B車の任意保険の用途を事業用に変更する

自家用保険と事業用保険の保険会社が同一でない場合

自家用車で加入していた保険とは別の保険会社で新たに事業用保険に加入する場合の等級を引き継ぐ手順は、以下の通りです。

  1. A車の任意保険を解約して中断証明書を発行する
  2. B車を黄色ナンバーで納車する
  3. B車で黒ナンバーに対応した保険会社の任意保険に加入する
  4. B車で黒ナンバーを取得する
  5. B車の任意保険の用途を事業用に変更する

中断証明書を発行すると、自動車保険を解約する際に当時の等級を最大10年間維持することができます。

なお、既に所有している軽乗用車で黒ナンバーを取得する場合、車両変更や中断証明書の発行といった手続きは不要です。

黒ナンバーの任意保険の等級を引き継ぐ際の注意点

ここからは、任意保険の等級を引き継ぐ際の注意点を解説していきます。

  • 等級を引き継ぎできることを知らないスタッフもいる
  • 黒ナンバーで納車しない

等級を引き継ぎできることを知らないスタッフもいる

軽貨物ドライバーにとって、任意保険の等級の引き継ぎは保険料を大幅に削減できる非常に便利な仕組みです。しかし、自動車保険会社のスタッフの中には、そうした制度を知らない方も少なくありません。

等級を引き継げることを知らないスタッフに対応されると、いくら尋ねても「引き継げない」と断られてしまう可能性も考えられます。ただ、代理店型の自動車保険の場合、複数の店舗に問い合わせることで対応してもらえるケースもあるようです。

黒ナンバーで納車しない

既に使用している自家用車から、新たに購入した事業用車両には等級を引き継ぐことができません。新たに配送車を用意する場合、黒ナンバーで納車してしまうと等級を引き継げなくなってしまうため、必ず黄色ナンバーで納車するようにしてください。

黒ナンバー車の任意保険料を下げる方法

等級の引き継ぎ以外にも、黒ナンバー車の任意保険料を下げる方法は存在します。

  • 等級を上げる
  • 年払いにする

自動車保険が適用されるような事故を起こさないよう安全運転を続けていくと、等級が高くなり保険料の割引率も上がっていきます。

保険料の支払い方法を月払いではなく年払いにすると、わずかではありますが支払う保険料の総額が少なく済む場合があります。ただ、一度に大きな金額を支払わなければならず、まとまったお金を用意する必要がある点に留意しておきましょう。

等級を引き継ぎして任意保険料を抑えよう

軽貨物ドライバーにとって、毎月の任意保険料は決して小さくない負担となります。自家用車での等級が高い方は特に、等級を引き継いで保険料を安く抑えられることを知らずに、黒ナンバー車で新たに任意保険を契約してしまうのは非常にもったいないです。

今回お伝えした手順や条件、注意点を踏まえて手続きを進め、任意保険料の削減を目指してみてください。

なお、先述した通り、保険会社によっては必要な条件を満たしていても等級を引き継げないケースもあります。等級の引き継ぎを検討している方は、黒ナンバー車での加入を予定している保険会社に一度問い合わせてみることをおすすめします。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

軽カモツネットは株式会社ギオンデリバリーサービスが運営する、軽貨物ドライバー向けの情報発信メディアです。運営元のギオンデリバリーサービスは2013年の設立以来、神奈川県相模原市を中心に業務委託ドライバーの開業支援や宅配サービスの運営など多岐にわたるサポートを行ってきました。拠点数は全国40カ所以上、約2,000名のドライバーが、日々安全で効率的な配送をご提供しています。軽カモツネットでは、軽貨物ドライバーの皆様のニーズに応え信頼される情報を発信してまいります。