普通自動車免許があれば誰でも簡単に事業を始められる上に、ネット通販の普及によって近年注目を集めている軽貨物ドライバー。しかし、個人事業主として開業する際には、まとまった資金を事前に確保しておかなければなりません。
軽貨物ドライバーとして開業したいけれど開業資金を用意するのが難しいという方におすすめしたいのが、助成金や補助金を活用することです。
今回のコラムでは、軽貨物ドライバーが個人事業主として開業する際に利用できる助成金や補助金について詳しく解説していきます。開業時の初期費用を削減するためのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
【軽貨物ドライバー】開業時に発生する費用
軽貨物ドライバーが個人事業主として開業する際に必要な資金は約50~200万円と言われており、その大半を車両代が占めています。従って、配送車をどのように確保するかによって用意すべき金額は大きく変わってきます。
新車を購入すれば100〜200万円近くの初期費用が発生しますが、リース契約を結べば数万円程度で済むことが一般的です。既に事業用の軽貨物車を所有している方であれば、初期費用無しで配送車を確保できます。
また、ドライバー業の経験がない方は特に、始めのうちは効率良く案件を請けたり、配送スピードを上げて成果報酬を増やしたりすることは難しいです。業務に慣れて安定的に収入を得られるようになるまでは、なかなか稼げないと感じる方も多いでしょう。
思うように収入を伸ばせない期間に支払うガソリン代や駐車場代といったランニングコストを考慮し、開業資金は多めに確保しておくことをおすすめします。
そもそも助成金・補助金とは?
軽貨物ドライバーが開業資金をスムーズに確保するための手段として、助成金や補助金を利用することが挙げられます。実際に活用できる助成金や補助金を紹介していく前に、それぞれの概要を改めて確認していきましょう。
助成金 | 補助金 | |
---|---|---|
主な目的 | 労働環境の安定 | ・政策や事業の推進・周知 ・産業の育成 ・地方創生 など |
支援する活動 | 雇用促進・職場改善 など | 事業拡大・設備投資 など |
主な管轄 | 厚生労働省 | 経済産業省・地方自治体 |
財源 | 雇用保険料 | 税金 |
返済義務 | 無し | 無し |
どちらも主に国や地方自治体によって提供されていますが、民間団体から支給されるものもあります。返済義務が無いといった共通点の多い両者ですが、最大の違いは「受給しやすさ」だと言えるでしょう。
助成金の募集期間は約半年~1年間と長く、対象者や対象活動などの基準を満たしていればほぼ100%受給することができます。
一方、補助金を申請できる期間は数週間~1ヶ月程度。予算や定員も限られており、定員を超える応募が集まって倍率が高くなるケースが多いです。補助金を受給するためには、提出する書類を通して必要性をしっかりとアピールすることが欠かせません。
軽貨物ドライバーが開業時に使える助成金5選
軽貨物ドライバーが開業資金の確保に役立てられる助成金として、主に以下の5つが挙げられます。
※助成金の管轄は主に厚生労働省ですが、本記事では日本トラック協会の管轄する助成事業について取り上げています。助成を受けるには、各都道府県のトラック協会に入会する必要がある点に注意しましょう。
- 安全装置等導入促進助成事業
- アイドリングストップ支援機器導入促進助成事業
- トラック運転者の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」スクリーニング検査助成事業
- 血圧計導入促進助成事業
- 若年ドライバー確保のための運転免許取得支援助成事業
対象 | 上限 | 目的 | |
---|---|---|---|
安全装置等導入促進助成事業 | 安全装置(バックアイカメラ・サイドビューカメラなど)の導入 | 機器取得価格の2分の1(2~4万円まで) | 事業用トラックの交通事故防止を支援する |
アイドリングストップ支援機器導入促進助成事業 | エアヒータまたは車載バッテリー式冷房装置の取得 | 機器取得価格の2分の1(6万円まで) | アイドリングストップ支援機器の普及を支援する |
トラック運転者の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」スクリーニング検査助成事業 | SASスクリーニング検査(第1次・第2次) | ・第1次検査費用の半額(1人あたり500円まで) ・第2次検査費用の半額(1人あたり2,000円まで) |
トラックドライバーの安全性向上・健康増進を支援する |
血圧計導入促進助成事業 | 業務用全自動血圧計の導入 | 機器取得費用の2分の1(5万円まで) | 乗務前点呼における 血圧測定を推進し、高機能な血圧計の普及を図る |
若年ドライバー確保のための運転免許取得支援助成事業 | ・特例教習の講習 ・準中型免許の新規取得・5トン限定準中型免許の限定解除 |
都道府県トラック協会に準ずる | 少子高齢化に対応した若年労働者を確保する |
従業員を雇用する予定があるかどうか、配送車にどんな設備を導入するかなどによって利用できる助成金が異なってきます。事業計画をしっかりと策定した上で、自身に合う助成金を活用しましょう。
軽貨物ドライバーが開業時に使える補助金3選
軽貨物ドライバーが活用できる補助金は以下の通りです。
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 先進安全自動車(ASV)導入補助金
対象 | 上限 | 目的 | |
---|---|---|---|
IT導入補助金 | 中小企業 | 30~450万円 | 様々な経営課題を解決するためのITツール導入を支援する |
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者 | ・通常枠:50万円 ・各特別枠:200万円 |
小規模事業者の販路開拓を支援する |
先進安全自動車(ASV)導入補助金 | 事業用自動車のASV装置購入者 | ・トラック:15万円 ・バス:30万円 ・貸切バス:20万円 |
ドライバーの安全運転を支援する |
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入するにあたって必要となる資金を援助してくれる制度です。軽貨物ドライバーであれば、売上管理を行うクラウド会計ソフトの導入といったケースで活用できるでしょう。
参照:IT導入補助金2024
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の販路拡大や生産性向上を目的とした小規模事業者持続化補助金。支給される条件は業種によって異なります。運送業の場合、対象となるのは従業員数が20名以下の事業者のみです。
軽貨物ドライバーの場合、使用用途は顧客獲得を目的としたチラシの作成やWeb広告の出稿に限られ、申請する際には領収書や納品書などの証拠が必須となります。
なお、小規模事業者持続化補助金の公募要項には「汎用性が高く目的外でも使用できるものは対象外である」と明記されています。軽貨物ドライバーにとって欠かせない配送車やドライブレコーダー、カーナビなども対象外となる点に留意しておきましょう。
参照:小規模事業者持続化補助金
先進安全自動車(ASV)導入補助金
先進安全自動車(ASV)導入補助金は、ドライバーの安全運転を支援するための補助金です。運転時の安全確保を目的として事業用自動車に設置する、以下のような装置の導入を支援してくれます。
- 衝突被害軽減ブレーキ
- 車間距離制御装置
- 先進ライト
- 側方衝突警報装置
補助金の上限は設置する機器や車両の種類によって異なるため、管轄している国土交通省のホームページを確認することをおすすめします。
参照:国土交通省『先進安全自動車(ASV)の導入に対する支援(令和6年度)』
助成金・補助金を利用する際の注意点
ご紹介した助成金や補助金を利用する際には、以下のポイントに注意するべきです。
- 申請書は抜け漏れなく記載する
- 申請書の提出期限を守る
- 申請理由の記載に力を入れる
申請書は抜け漏れなく記載する
必要書類に不備や漏れがあると、手続きの遅れに繋がってしまいます。受給が遅れると事業を始めるタイミングに影響が出てしまう可能性も考えられるため、正確に記入することを心掛けましょう。
申請書の提出期限を守る
助成金や補助金の募集要項を見ると、期限を過ぎた後での申請は受け付けない旨が記載されているものが目立ちます。申請書の提出期限は必ず守るようにしてください。
申請理由の記載に力を入れる
助成金や補助金の申請書のほとんどには、申請理由や目的を記載する項目が存在します。
申請理由をなんとなく記載してしまうと、手続きを行う担当者に資金の必要性が十分に伝わりません。特に補助金の場合、申請理由は審査において重要な基準の1つであり、採否に大きく影響します。
- 他一つの段落は短文にまとめる
- 専門用語の使用は避ける・適切な補足を入れる
- 客観的な資料を活用して数字の根拠を明確に示す
- 図表や写真を使用してわかりやすく説明する
上記のようなポイントを押さえ、記入例や過去に採択された事例を参考に細部までこだわって記載するのが良いでしょう。
軽貨物ドライバーが開業資金を抑えるコツ
助成金や補助金を活用できるとはいえ、自身で負担する初期費用はできる限り少なく抑えたいものです。軽貨物ドライバーが開業資金を削減するコツとして、以下の2つが挙げられます。
- 配送車を安く貸してくれる運送会社と業務委託契約を結ぶ
- 備品はできる限り既存の私物で補う
配送車を安く貸してくれる運送会社と業務委託契約を結ぶ
必要な開業資金のほとんどを占める車両代を抑えることが最も有効的です。無料、あるいは良心的な価格で配送車を貸し出してくれる運送会社と業務委託契約を結べば、配送車を確保するのに必要な初期費用がぐっと抑えられ、開業資金も大幅に削減できます。
配送車の貸し出しの有無や料金について事前に尋ね、複数の委託元を比較した上で契約する運送会社を選ぶのが良いでしょう。
備品はできる限り既存の私物で補う
軽貨物ドライバーとして活動する際には、配送車の他に以下のような備品を用意することが一般的です。
- スマートフォン
- スマートフォンスタンド
- モバイルバッテリー
- ボールペン
- コインケース
これらを全て新たに購入しようと思うと、開業資金はそれなりにかさみます。開業前の出費を少しでも抑えるため、細かな備品に関しては可能な限り既に持っている私物で補いましょう。
助成金・補助金で余裕を持った資金繰りを
軽貨物ドライバーが個人事業主として開業する際に必要な初期費用は決して少なくありませんが、補助金や助成金を活用すれば、自身で負担する金額を抑えることができます。
事業規模をどれくらい拡大させていくのか、従業員は雇用するのかなど今後の方針を整理し、自分に合った助成金や補助金を利用してみてください。
この記事の執筆者
軽カモツネット編集部
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