全ての自動車の所有者には、車検を受けることが義務づけられています。軽貨物ドライバーが配送業務で使用する軽貨物車、いわゆる4ナンバー車も、当然車検を受けることが必須です。
軽貨物車の車検において注意したいのが、一般的な自家用車の場合とは異なる条件やルールが存在するという点です。特にタイヤに関する通過条件は、車両の用途や最大積載量などに応じて変わってくるため、あらかじめ正しく把握しておく必要があります。
本記事では、軽貨物車の車検に関する基本的な知識や点検項目について解説するとともに、特にタイヤに関して、車検を通過するために押さえておきたいポイントを紹介します。
タイヤの車検基準とは

まずは軽貨物車のタイヤに関する車検基準を紹介していきます。
溝が1.6mm以上残っている
普通自動車、軽自動車ともに、タイヤの溝の深さは1.6mm以上であることが必須です。
タイヤがすり減って溝がなくなると、スリップサインと呼ばれる突起が露出します。タイヤに1箇所でもスリップサインがあると保安基準を満たしていないと判断され、タイヤを交換した上で再検査を受けなければなりません。
著しい破損がない
安全性を確保するのが難しいほどタイヤが破損していると、当然車検に通ることはできません。具体的には、タイヤに石が挟まっている、ガラス片や釘などが刺さっているといった状態が該当します。
本来ゴム層で覆われているはずのコード層(タイヤの骨格を形成する繊維層)が露出しているのもNGです。
偏摩耗がない
偏摩耗とは、タイヤが部分的に異常に摩耗する現象のことです。タイヤが偏摩耗すると振動や騒音の原因になる他、耐久性や排水性の悪化にも繋がります。
偏摩耗に関する具体的な数値基準はなく、車検では目視で確認されますが、安全性に影響を及ぼすと判断されると不合格の対象になります。
適正空気圧である
タイヤ本来の性能を発揮する上で、空気圧を適切に管理することは欠かせません。タイヤの適正空気圧はメーカーによって車種ごとに指定されており、運転席側のドア付近や給油口などに貼られているシールで確認できます。
空気圧の過不足は車検に落ちる直接の原因となることはありませんが、車が直進した際のタイヤの横ずれの度合いや、溝の深さといった他の検査項目に影響が出る可能性が高いです。
規定以上にはみ出ていない
乗用車の場合、10mm未満であればタイヤがフェンダー(タイヤを覆う外板)からはみ出していても問題ないとされています。しかし、事業用の軽貨物車の場合は、10mm未満であってもタイヤのはみ出しが認められていないことに留意しておきましょう。
タイヤに加わる荷重がタイヤの負荷能力以下である
負荷能力とは1本のタイヤで支えることができる荷重(質量)のことを指し、ロードインデックス(LI)と呼ばれる指標に応じて決められています。ロードインデックスはタイヤの種類や大きさによって異なり、タイヤの側面に表示されています。
車検の基準では、「(55kg×乗車定員+最大積載量)÷車両のタイヤ数」の値がロードインデックスに応じたタイヤの負荷能力以下でなければなりません。
軽貨物車の車検は乗用タイヤでも通らないって本当?

重い荷物を運搬することを想定して作られた軽貨物車には、自家用車よりも高い耐荷重が必要です。大きな負荷に耐えられるよう、「LT(ライトトラック)」と記載のある専用のタイヤを装着することが前提とされています。
かつては、軽貨物車がLTタイヤ以外を履くのは違法とされ、ホイールも国土交通省の技術基準をクリアした「JWL-T」という刻印の入ったものしか認められていませんでした。
現在は法改正により、乗用タイヤや乗用車用の刻印「JWL」が入ったホイールも装着できるようになっています。こうした中、アルミホイールをつけたりリフトアップしたりと、軽貨物車のタイヤを自分好みにカスタマイズしたいと考える方も多いでしょう。
ただ、カスタマイズした状態でタイヤがはみ出ていないか、負荷能力は十分かといった車両の区分に限らず設けられている条件を満たさなければ、当然車検には受かりません。
依頼先によっては、乗用車用のタイヤやホイールに関して厳しくチェックされたり、車検に落ちる決め手となったりすることもあるため要注意です。
軽貨物車を車検に出す前に知っておきたいポイント
軽貨物ドライバーが4ナンバーの軽自動車を車検に出す上で知っておきたい、自家用車の車検との違いを解説していきます。
有効期間
軽自動車の車検の有効期間は以下の通りです。
初回(新車時) | 2回目以降 | |
---|---|---|
自家用 | 3年 | 2年 |
事業用 | 2年 | 2年 |
※2025年2月時点
自家用車、事業用車ともに、2回目以降は2年ごとに車検を受ければ問題ありませんが、初回の有効期間は異なるため要注意です。新車登録してから初回の車検までは、自家用の軽自動車で3年、軽貨物車で2年となります。
費用
軽貨物車の車検を受ける際には、以下のような費用が発生します。
整備費用
- 基本料金
- 工賃・部品代
車検を依頼する業者に支払う基本料金は店舗によって異なりますが、軽自動車の場合は自家用、事業用ともに約35,000円が相場だとされています。
車検の依頼先として挙げられるのは、ディーラーやカー用品店、ガソリンスタンドや整備工場などです。正規のディーラーに依頼すると費用が高額になる傾向がありますが、その分安全性が高く、サポートも充実しています。
整備工場やカー用品店の多くでは相場に近い価格で、最低限の整備のみを行う車検専門店では比較的割安な価格で依頼することが可能です。
基本料金に加え、車両の状態に応じた追加費用も発生してきます。日々の業務で長い距離を走行する軽貨物車の場合、一般的な自家用車に比べて部品が早く消耗する傾向にあり、工賃や部品代がかさみやすいです。
法定費用
車検を受けるにあたって支払わなければならない法定費用は、どの業者に依頼しても変わりません。具体的には、以下のような費用が発生します。
自家用・乗用自動車 | 事業用・貨物自動車 | |
---|---|---|
自動車重量税 | 6,600円 | 5,200円 |
自動車税(毎年) | 10,800円 | 3,800円 |
自賠責保険料 | 17,540円 | 17,540円 |
印紙代 | 約1,400円 | 約1,400円 |
※2025年2月時点
用途(乗用・貨物、自家用・事業用)に応じて金額が変わるものもありますが、今回は一般的な自家用乗用車、軽貨物ドライバーが使う事業用の貨物自動車に絞って紹介しています。
自動車税は車検とは関係なく、毎年納税しなければなりません。印紙代は、検査や登録、車検証の発行といった各種手続きで発生する手数料を指します。業者によって異なりますが、1,400円前後であることが一般的です。
必要書類
軽貨物車であっても一般的な自家用車であっても、車検を受ける際には以下のような書類を用意しなければなりません。
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
自動車検査証(車検証) | 運輸支局の窓口で受け取る |
自賠責保険証明書 | 加入手続き後に受け取る |
軽自動車税納税証明書 | 納税場所で領収書と一緒に受け取る |
なお、専門業者に任せず自分で行うユーザー車検の場合は、追加で以下のような書類を用意します。
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
自動車重量税納付書 | 運輸支局の窓口で受け取る |
点検整備記録簿 | 運輸支局の窓口・インターネットで発行する |
軽自動車検査票 | 軽自動車検査協会窓口で受け取る |
継続検査申請書 | 軽自動車検査協会窓口で受け取る |
当日は上記の書類に加え、車検料と印鑑を準備しておきましょう。車検を受ける場所によっては追加で必要なものが発生する場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
車検の前にチェックしておきたい項目

車検に通らないと、当日または後日に再検査を受けなければなりません。1回で通過するため、事前にセルフチェックしておきたい項目を解説していきます。
見た目
軽貨物車の状態を把握するためのチェックポイントのうち、見た目で判断できるものとしては主に以下が挙げられます。
- 車検証に記載されている車両情報と実際の車両の情報が一致しているか
- タイヤに亀裂やコード層の露出などがないか
- タイヤが摩耗して溝が少なくなっていないか
- ガラスが破損していないか
- 運転席・助手席のガラスの透過率が70%を超えているか
※窓ガラスに着色フィルムや紫外線カットシールなどを貼り付けている場合 - メーターパネルの警告灯が点灯していないか
- メーターパネルの警告灯は正常に作動するか
- 内装に異常はないか(シートベルト・ヘッドレストなど)
注意深く点検してあらかじめ異常を解消しておけば、車検に1回で通りやすくなるでしょう。
動作
軽貨物車に搭載されている設備に関してドライバーが確認しておける項目は、主に以下の通りです。
- ブレーキは正常に作動するか
- ランプ類は指示通りに動くか
※ヘッドライト・ウインカー・ブレーキランプ・ハザードランプなど - ウインドウォッシャーは指示通りに動くか
- ウインドウォッシャーのアームが折れていないか
- ウインドウォッシャーのゴムが切れたり劣化したりしていないか
- マフラーの音量は大きすぎないか
- マフラーの触媒(排気ガスを浄化する装置)があるか
- クラクションは正常に鳴るか
- クラクションの音は一定か
- ブーツ類は破損していないか
車検に通らない要因として特に多いのが、ブレーキが老朽化していて利かない、ブーツが破れているといった不備。簡単に動作確認できる項目に関しては、事前にセルフチェックしておくことをおすすめします。
【軽貨物車の車検】タイヤのカスタムは慎重に
軽貨物車の車検における基準は、一般的な自家用車の場合と大差ありません。しかし、一部の通過条件や車検期間、費用などが異なる点には留意しておく必要があります。
軽貨物車への乗用タイヤやアルミホイールの装着については、昨今の法改正によってかなり規制が和らぎました。とはいえ、今回紹介したような保安基準を満たさなければ、もちろん車検を通過することはできません。
乗用タイヤやホイールを装着して軽貨物車をカスタムしたいドライバーの方は、タイヤのロードインデックスや外径などについて、車検の前にしっかりと確認しておきましょう。
この記事の執筆者

軽カモツネット編集部
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