自身のライフスタイルに合わせて自由な働き方を選択できる、普通自動車免許があれば気軽に始められるといった点から近年注目されている軽貨物ドライバー。事業をスタートさせる際に必須となるのが、配送用の軽貨物車です。

「荷物の配送を目的とした軽自動車」を意味する軽貨物車ですが、具体的には軽バンや軽トラックなどを指しており、一般的な軽乗用車とはいくつかの違いがあります。

今回のコラムでは、軽貨物車と軽乗用車の違いを詳しく解説していきます。軽貨物ドライバーとしての活動を始めることを検討している方に向けて車両の選び方も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

軽自動車に関する基礎知識

軽貨物車は軽自動車の一種です。従って、軽自動車の規格である以下を満たしていなければなりません。

  • 長さ:3.4m以下
  • 幅:1.48m以下
  • 高さ:2.0m以下
  • 排気量:660cc以下

上記を満たした軽自動車は構造や使用目的によって乗用車・貨物自動車・特種用途自動車の3つに分類され、軽貨物ドライバーが使用する車両は「貨物自動車」に該当します

なお、軽自動車のナンバープレートは黄色か黒のいずれかです。黄色は一般的な家庭で利用される「自家用」であるのに対して、黒いナンバープレートは「営業用」であり、荷物を運んで報酬を得る事業に使用されます。

軽貨物車と軽乗用車は何が違うの?

ここからは、軽貨物車と軽乗用車の違いについてさらに詳しく解説していきます。

  • ナンバープレート
  • 価格
  • 税金・保険料
  • 車検期間
  • 燃費
  • 最大積載量

ナンバープレート

先述した通り、軽自動車のナンバープレートの色は用途に応じて異なります。軽乗用車には黄色、軽貨物車には黒色のナンバープレートが付与されるため、見た目で簡単に判別することが可能です。

価格

軽乗用車や軽貨物車の購入価格は、メーカーによってかなり幅があります。ただ、軽貨物車は「荷物を運ぶための車両」として装備を最低限に抑えて製造されることが多く、軽乗用車に比べて新車の本体価格が安い傾向にあります。

中古車の購入価格も、装備品や車両の状態によって大きく変わってきます。しかし、仕事に使うためすぐに購入したい、安く手に入れたいといったニーズが常にあることから、軽貨物車は軽乗用車よりも価格が下がりにくいです。

「安く買えて高く売れる」ことが軽貨物車の大きな特徴の1つだと言えます。

税金・保険料

軽乗用車、軽貨物車にかかる税金や法定費用はそれぞれ以下の通りです。

  軽乗用車 軽貨物車
自動車税 5,000円 3,800円
自動車重量税 6,600円 5,200円
自賠責保険料 17,540円 17,540円
印紙代 1,400円前後 1,400円前後

※2024年11月時点の情報です。

自動車税や自動車重量税に関しては、事業用である軽貨物車の方が安くなっています。

自賠責保険料は軽乗用車と軽貨物車どちらの場合も同額ですが、任意保険料は軽貨物車の方が高くなる傾向にあります

軽貨物ドライバーを始めとする軽貨物車を利用する方は、軽乗用車に乗る方に比べて走行距離が長くなりがちであり、その分事故を起こすリスクが高いとみなされるためです。

車検期間

軽乗用車と軽貨物車の車検期間はそれぞれ以下の通りです。

  初回(新車の場合) 2回目以降
軽乗用車 3年 2年
軽貨物車 2年 2年

※2024年11月時点の情報です。

2回目以降はどちらも2年毎ですが、初回のみ軽乗用車は3年、軽貨物車は2年と異なっています。先述した自動車重量税や自賠責保険料、印紙税は車検を受ける際に発生する税金であるため、車検期間の違いについてもしっかりと把握しておきましょう。

燃費

先述したように、軽貨物車は装備を最低限に抑えて製造されることが多く、燃費性能も軽乗用車に劣っていることが一般的です。加えて、重い荷物を載せて長距離運転を続けているとエンジンに大きな負荷がかかるため、どうしても燃費は悪くなります

最大積載量

道路交通法により、軽貨物車の最大積載量は一律で350kgと定められています。(4名乗車時は250kgもしくは200kg)ただし、車種や機能設備によって正確な最大積載量が変わってくる場合があるため、車検証を確認しておくと良いでしょう。

一方、軽乗用車の最大積載量は「(乗車定員-乗車人数)×55kg」で算出することが可能です。荷物を運ぶことを主な目的として作られている軽貨物車に比べると、載せられる荷物の量は限られています。

なお、最大積載量を超える荷物を載せた「過積載」状態での運転は道路交通法違反に該当します。事故のリスクが高まったり、車体や道路への負荷が大きくなったりと非常に危険であり、相応の罰則が課せられます。

自身が使用する車両の最大積載量は確実に把握しておくべきでしょう。

軽貨物車の最大積載量や過積載を犯してしまった場合に課せられる罰則については、下記の記事でさらに詳しく解説しています。気になる方はぜひチェックしてみてください。

軽乗用車・軽貨物車のメリット・デメリット

軽貨物ドライバーに欠かせない事業用の軽貨物車、つまり黒ナンバー車を確保する方法としては、以下の2つが挙げられます。

  • 4ナンバー車(軽貨物車)をそのまま黒ナンバー登録する
  • 5ナンバー車(軽乗用車)を構造変更して黒ナンバーを取得する

軽貨物ドライバーが配送車として使用する上での軽乗用車、軽貨物車のメリット、デメリットを以下にまとめました。

  メリット デメリット
軽乗用車 ・乗り心地が良い
・燃費が良い
・装備が充実している(加速性能など)
・最大積載量が小さい
・税金が高い
軽貨物車 ・最大積載量が大きい
・税金が安い
・安く買って高く売れる
・乗り心地が軽乗用車に劣る
・燃費が悪い

お伝えしているように、軽貨物車は「多くの量の荷物を運ぶ」という目的を最優先に作られます。そのため、荷室が広く設計される傾向にある一方で、ドライバーが快適に運転するための以下のような装備は備わっていないことが一般的です。

  • シートリクライニング
  • パワースライドドア
  • シートヒーター
  • ロールサンシェード

一方、軽乗用車はドライバーや同乗者が快適に利用することに重点を置いて設計されます。前述したような装備が整っている他、加速性能や燃費なども軽貨物車に比べて優秀であることが多いです。

軽貨物車の種類

軽貨物ドライバーとしての業務をスムーズに遂行することを第一に考えるのであれば、配送車として利用するのに適しているのは軽乗用車よりも軽貨物車だと言えるでしょう。ここからは、軽貨物ドライバーが利用できる軽貨物車の種類をご紹介します。

  • 軽バン
  • 軽トラック・幌車
  • 冷蔵冷凍車

軽バン

ワンボックス型の軽バンは、軽貨物ドライバーが使用する配送車として最も一般的な車種です。コンパクトながら広い荷室を備えており、軽貨物車の中では燃費性能も優れています。

最近では車中泊やアウトドアなどレジャーシーンで活用されるケースも増えており、普段使いする上での利便性の高さも特徴です。

軽トラック・幌車

幌タイプの車両を使用するドライバーも多いです。幌車の大きな特徴としては荷台が広く、荷物をたくさん載せられる点が挙げられます。家具のような大型の荷物を積み込むのに向いている車種です。

冷蔵冷凍車

冷凍冷蔵車とは、荷台が断熱構造になっており冷却性能を備えている車種のことを指します。生鮮食品や冷やしながら運ばなければならない医薬品のような特殊な荷物を運べるのが強みです。

より幅広い案件に対応できる一方、高価格で販売される傾向にあります。維持費や修理代も高くなりやすく、コストパフォーマンスは他の軽貨物車に比べて劣っていると言えるでしょう。

【軽貨物ドライバー必見】軽乗用車・軽貨物車の選び方

軽貨物ドライバーとして事業を始めることを検討している方にぜひチェックしてほしい、配送車として利用する軽貨物車や軽乗用車を選ぶ際のポイントを解説していきます。

  • 購入費・維持費
  • 荷室の広さ
  • 燃費
  • カスタム性
  • 安全装置の有無

軽貨物ドライバーが個人事業主として開業する際に必要な初期費用は約50~200万円と言われていますが、その大半を占めるのが車両代です。5~10万円前後発生する毎月の経費も、ほとんどはガソリン代や自動車保険料など、配送車にかかる費用です。

そのため、軽貨物車や軽乗用車を選ぶ上で購入費や維持費は決して無視できない要素の1つ。開業時に確保できる資金や今後予定している働き方に応じて、予算を調整することをおすすめします。

業務のパフォーマンスに直接影響する荷室の広さや、毎月のガソリン代を左右する燃費なども重視したいポイントとして挙げられますが、見落としがちなのが安全装置の有無です。

軽貨物車の安全性能は昨今どんどん改善されており、軽乗用車と同じぐらい質が高いものも少なくありません。購入費用は高くなりますが、事故のリスクを軽減するためにも、バックモニターや自動ブレーキなどの安全装置を搭載した車種を選ぶのが良いでしょう。

軽貨物車・軽乗用車は用途に応じて選ぼう

自家用車としての使用を想定している軽乗用車と荷物を運ぶことを主目的として設計されている軽貨物車では、搭載されている設備や性能が大きく異なります。

配送車として利用する場合、業務効率を優先したい方は軽貨物車を、普段使いも想定して乗り心地の良さを求めるのであれば軽乗用車を構造変更して使用するのがおすすめです。自身の働き方や配送車に求めるポイントに応じて、適切な車種を選んでみてください。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

軽カモツネットは株式会社ギオンデリバリーサービスが運営する、軽貨物ドライバー向けの情報発信メディアです。運営元のギオンデリバリーサービスは2013年の設立以来、神奈川県相模原市を中心に業務委託ドライバーの開業支援や宅配サービスの運営など多岐にわたるサポートを行ってきました。拠点数は全国40カ所以上、約2,000名のドライバーが、日々安全で効率的な配送をご提供しています。軽カモツネットでは、軽貨物ドライバーの皆様のニーズに応え信頼される情報を発信してまいります。