黒ナンバーは、軽貨物運送業を営む車両に必須のナンバープレートです。

黒ナンバーの車両には自賠責保険の加入に加え、任意保険への加入が強く推奨されています。しかし、「任意」ゆえに、任意保険への加入に関して深く考えずに見送ってしまう方も中にはいらっしゃいます。

本記事では、黒ナンバーに任意保険の加入が求められる理由や、軽貨物ドライバーにおすすめの任意保険と、その補償内容などについてご紹介します。

黒ナンバー(軽貨物)とは

黒ナンバーは、運送業者が使用する軽貨物車両(=4ナンバー)に付けられるナンバープレート。正式には「営業ナンバー」とも呼ばれ、プレートの背景部分が黒、文字が黄色です。

黒ナンバーを取得していない軽貨物車両で運送業務を営むことは法律で禁止されています。

業務委託や副業の場合でも、営利目的の運送業務に使用する車両は黒ナンバーの取得が必須です。

業務に自身が所有する軽貨物車両を使用する場合、黒ナンバーの取得手続きは業務委託先に任せるのではなく、自分自身で行う必要があります。

黒ナンバーを新規取得するためには、運輸支局から許可を得る必要があり、その際に重要な審査基準となるのが、「任意保険への加入」です。

黒ナンバー(軽貨物)に任意保険(自動車保険)は必要?

結論から申し上げますと、任意保険への加入はしたほうが良いと言われています。ここでは、軽貨物ドライバーに、任意保険への加入が推奨される3つの理由をご紹介します。

  • 黒ナンバー取得には損害賠償能力の証明が必要になる
  • 自賠責保険では補償範囲が限定される
  • 任意保険に加入が登録・契約の条件となっている場合が多い

黒ナンバー取得には損害賠償能力の証明が必要になる

黒ナンバー取得の1つの条件となっているのが、運送業務中の事故に備えた損害賠償能力の証明です。

運輸支局に提出する届出の宣誓欄の中に、「貨物の輸送に関し支払うことのある損害賠償の支払い能力を有することを宣誓します。」という項目があり、これにチェックを入れる必要があります。

運輸支局が任意保険への加入を直接確認することはありませんが、実は自賠責保険だけでは損害賠償責任を完全にカバーすることは難しいです。

次で詳しく説明しますが、自己負担なく賠償金を支払うためには、任意保険への加入が必須と言えます。

自賠責保険では補償範囲が限定される

自賠責保険は、法律で加入が義務付けられていますが、補償が適応されるのは対人事故の損害賠償のみ。補償の限度額も決められており、死亡時には最高3,000万円、後遺症障害では最高4,000万円、傷害では最高120万円まで補償されます。

そのため、下記のケースには対応しきれません。

  • 物損事故の対物賠償
  • 自分の怪我に対する補償
  • 自分の車両に対する補償
  • 自賠責保険の補償額を超える対人賠償

任意保険に加入することで、自賠責保険では補償しきれない範囲をカバーし、事故後の経済的負担を軽減できます。

軽貨物ドライバーは走行距離が長く、車の使用頻度も多いため、事故のリスクが高くなります。安心して運送業務を行うためにも、賠償金の支払いが発生するリスクに備えて任意保険に加入しましょう。

任意保険への加入が登録・契約の条件となっている場合が多い

軽貨物ドライバーの業務委託元やマッチングサイトの多くは、任意保険への加入を契約・登録の必須条件としています。

任意保険に未加入の場合、賠償能力を証明できず、契約が成立しない可能性が高いです。軽貨物ドライバーとして働くためには、任意保険への加入は必須と捉えましょう。

軽貨物ドライバーが加入すべき任意保険

軽貨物ドライバーに加入が推奨される3つの任意保険と、それぞれの補償内容をご紹介します。

  • 賠償責任保険
  • 車両保険
  • 傷害保険

賠償責任保険

賠償責任保険は、運転中の事故で他人に怪我をさせたり、物品を壊して損害賠償が発生した場合に補償される保険です。

  • 対人賠償保険…交通事故で他人を死傷させた場合に自賠責保険の限度額を超える部分を補償
  • 対物賠償…交通事故で他人の物品に損害を与えた場合に発生する損害賠償を補償する(他人の車両、建物、ガードレールや信号機などの公共設備、商業施設の看板やフェンスなど)

万が一の事故に備えて、対人・対物どちらの保険にも加入しましょう。また、保険金額は「対人無制限」「対物1億円以上」のプランに加入することが推奨されています。

車両保険

車両保険は、自分の車両が被った損害を補償します。

補償範囲は、他者との衝突事故、自損事故、盗難、火災、自然災害(地震・津波・噴火による被害は対象外)など多岐に渡ります。

車両保険により、修理費用や買い替え費用の負担を軽減することが可能です。

業務に自家用車を使用する軽貨物ドライバーは、車が修理や盗難によって使用できない間仕事ができません。収入がない中で車の修繕費や買い替え費によって生活が圧迫されることがないように加入を検討しましょう。

傷害保険

傷害保険は、交通事故などによる運転手や同乗者の怪我や死亡に対する補償を行います。代表的なものは下記の4つです。

  • 人身傷害保険
  • 搭乗者傷害保険
  • 自損事故保険
  • 無保険車傷害保険

人身傷害保険

人身傷害保険は、交通事故で運転者や同乗者が怪我や死亡した場合に、過失割合に関係なく、実際の損害額に基づいて治療費などを補償します。

搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険は、人身傷害保険と同様に、交通事故で運転者や同乗者がケガや死亡した際に適用されます。人身傷害保険と異なり、予め定められた金額の保険金が支払われるのが特徴です。

自損事故保険

自損事故保険は、他車が関与しない単独事故で運転者がケガをした場合に、治療費や入院費などを補償する保険です。自己過失の事故でも補償されます。

人身傷害保険と併せて加入している場合、人身傷害補償が優先的に適用されるため、自損事故保険の保険金は支払われません。

無保険車傷害保険

無保険車傷害保険は、無保険車やひき逃げ車両との事故で運転者や同乗者が怪我や死亡した場合に、相手からの賠償が受けられない分を補償します。

黒ナンバー(軽貨物)の任意保険の特徴

黒ナンバー向けの任意保険には、一般的な自家用車用の任意保険とは異なる以下のような特徴があります。

  • 一般的な任意保険に比べて保険料が高い傾向にある
  • 特約による割引は無いケースが多い
  • 事業者向けの特約が用意されていることもある

一般的な任意保険に比べて保険料が高い傾向にある

事業で使用することを前提としている黒ナンバー車は、一般的な自家用車に比べて走行距離や使用頻度が必然的に多くなります。その分事故のリスクが高いため、任意保険料は割高に設定されていることが多いです。

特約による割引は無いケースが多い

割引額や詳しい内容は保険会社によって異なりますが、自家用車の任意保険の場合、以下のような特約をつけることで保険料が割安になることが一般的です。

  • 運転者限定特約:契約車両を運転する人を限定することで保険料が割引される
  • 運転者年齢条件特約:補償対象となる運転者の年齢を制限することで、保険料の割引が受けられる

一方、黒ナンバー車の任意保険では、そのような特約は基本的にありません。年齢や過去の運転実績による料金の割引も同様です。

特約による割引が受けられないことも、黒ナンバー車の任意保険料が一般的な自家用車の任意保険に比べて高くなっている要因の1つだと言えます。

事業者向けの特約が用意されていることもある

上述したような保険料の割引に繋がる特約はないことが一般的ですが、保険会社によっては補償内容をカスタマイズできる事業者ならではの特約が用意されているケースもあります。

軽貨物ドライバーが特約によって補償を受けられる代表的なケースとしては、車両に載せて配送していた荷物の損害に対して賠償責任が発生した場合が挙げられます。

黒ナンバー(軽貨物)の任意保険の料金相場はいくら?

黒ナンバーは一般的な自家用車の保険料よりも2~3倍ほど高くなります。

黒ナンバーの任意保険料の相場は一般的に年間約10~20万円程度。

料金は、運転者の年齢や運転歴、年間走行距離、保険会社の選定などによって変動します。また、補償内容やオプションの追加によっても保険料は異なるため、保険料と補償内容を考慮して本当に必要な保険なのか吟味しましょう。

黒ナンバー(軽貨物)の任意保険はどこで入れる?

黒ナンバーの任意保険を取り扱っているのは、一部の大手損害保険会社のみです。

インターネット上で申し込める自動車保険の取り扱いはないため、車を購入したディーラーや、保険代理店などに相談しましょう。

保険会社によって金額が変動するため、複数の保険会社から見積もりを取るのがおすすめです。

黒ナンバー(軽貨物)の任意保険を取り扱っている保険会社

黒ナンバーの任意保険を取り扱っている保険会社としては、以下の6社が挙げられます。

  • 損保ジャパン
  • 東京海上日動
  • 三井住友海上
  • あいおいニッセイ同和損保
  • AIG損害保険
  • 楽天損害保険

補償内容や保険料、強みなどは保険会社によって様々。例えば、損保ジャパンは運送業者向けの保険プランに強くドライバ―のニーズに応じたカスタマイズが可能であり、AIG損害保険はスタックに対応しています。

ただ、前述した通り任意保険を取り扱っている保険会社は限られているため、比較検討はしやすいでしょう。働き方や任意保険の支払いに費やせる予算、稼働中に運転する環境などに応じて、自身に合った保険会社を選べると良いです

黒ナンバー(軽貨物)の任意保険を安くする方法

黒ナンバーの任意保険には年齢制限の特約が適用されないため、個人契約で安くなる方法はありません。

しかし、複数台まとめて契約することで保険料が安くなる方法があります。それが、「フリート契約」と「ミニフリート契約」です。

フリート契約

10台以上の車両を保有する場合に適用され、保険会社によって多少異なりますが、70~80%の割引が適用されます。しかし、一度でも事故を起こしてしまうと、翌年の保険料が大幅にアップしてしまう点に注意が必要です。

ミニフリート契約

2台以上の車両を保有する場合に適用され、保有台数によって3~6%の割引が適用されます。注意点として、契約する全ての車両の保険開始日を同一にしなければならない点が挙げられます。別の保険に加入している場合、中途更改・満期が近ければ解約手続き後に一本化しましょう。

任意保険以外で軽貨物ドライバーが加入すべき保険

軽貨物ドライバーが任意保険の他に加入しておくべき保険として、貨物保険が挙げられます。

日々いくら丁寧に荷物を取り扱っていても、以下のような事態は起こり得ます。

  • 荷物が盗難に遭う
  • 交通事故に巻き込まれて衝撃で荷物が破損する
  • 預かった荷物を紛失してしまう
  • 指定された届け先とは別の場所に配送してしまう

宝石や美術品といった高級な荷物を担当するケースでは、生活に影響するような大きな賠償責任が発生してしまうことも考えられるでしょう。

貨物保険は上記のような事態に備え、軽貨物ドライバーが安心して稼働する上で欠かせない保険だと言えます。貨物保険については下記の記事でさらに詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ合わせてチェックしてみてください。

万が一の事故に備えて任意保険に加入しよう

黒ナンバーの任意保険の必要性や、任意保険の種類、補償内容などをご紹介しました。

決して安くはありませんが、任意保険は、軽貨物ドライバーを守る1つの手段です。

「自分は大丈夫」と過信することなく、万が一の事故や損害賠償の支払いリスクに備えて必要な任意保険に加入しましょう。

この記事の執筆者

軽貨物・業務委託ドライバーのための軽カモツネット

軽カモツネット編集部

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